たっちゃん、今日、退院後久しぶりに笑ったね。

ずっとふさぎ込んで、頭が痛いというから心配していたんだよ。

昨日、デイケアに私が迎えに行って、グッドタイミングで熊本の姉が
帰って来てくれて
たっちゃんの顔が少し明るくなったのが嬉しかったよ。

今日は、たっちゃん、かわいかったねぇ。って若いころのあなたの写真を
見ながら姉と3人で話したね。
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(昭和30年 東京で25歳の母。翌年一人で田舎の町までお嫁に行くのです)

たっちゃんは(多津子と言います)3人兄弟姉妹の末っ子。
和歌山で生まれて、小学3年生の時に母親が他界してから
姉のみよちゃんがたっちゃんのお母さん替わりだったんだ。

たっちゃんの若いころの話は、よく覚えているなぁと感心するほどで
写真を見ながらその時の様子を細かく話してくれる。

そして話を沢山していると、笑顔が戻ってきたんだよね。

そこでぽつりと言ったあなたの言葉
”また、一人になると思ったら、がっくりと寂しくなって
気持ちの落ち込みが止まらない”と。

察しはついていたけど、気持ちを正直に言えて良かったね。
寂しいよ、辛いよって、自分の気持ちを言わなきゃ、たっちゃんは
病気になってしまう。

あなたのこの言葉が素直に口から出てきて正直、私は安心したのです。

初めて病院に長期入院して、周りに沢山の人がいる環境に慣れて
元気だったあなた。最初は退院したいって言っていたけど
退院が近づくと頭が痛いと言い出した。

私は母の様子を見に行くけれど、仕事もあるし、別居だし。
同居の弟も忙しくしていて言葉少なだから、心細くなっていたんだね。

今まで一人の留守番に慣れていたあなただけど、病院の方たちは優しくて
とても居心地がよかったから一人になる寂しさや不安も感じるように
なっちゃったんだ。

そんな自分をダメだって思っていたようだけど
そんなこと、ないよ。みんな同じなんだよ。一人ぼっちを寂しくない
人なんていないさね。


今日すなおに話してくれたから、
”家でも病院にいた時の様に塗り絵をしようね”
”デイケア行けばお友達もできて楽しくなるかも”
”明日は一緒に有田まで、ドライブとお食事に行こうね”なんて
約束もできたね。

私は、あなたが父のことで苦労して、気丈にふるまっていた姿しか
知らなかったけど、年と共に、そして父がいなくなったら
素の ”小学3年で母を亡くして心細くて泣いていた” たっちゃんに
戻ってきたように感じています。

お父さんの若いころの写真を見て”わ、ハンサム”って私が言ったら
”お父さんが、社員旅行に行った時の写真を(そのころ東京にいた)私に
送ってくれたんよ”って嬉しそうだった。
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(古い写真でぼんやりした写真をうまく写せなかったけど父はハンサムでした)

たっちゃんは、本当にお父さんのことが好きだったんだねぇ。
こんな田舎の小さな町まで口約束だけを信じて、二年の手紙のやり取り
だけでお嫁に来たなんて。

その間父と交わした手紙は沢山あって私たちが子供の頃それを見つけて
からかったから、、隠してしまったよね。あれはどこに置いてあるのかしら?

あなたが父と結婚して本当に幸せだったのだろうかって子供の頃はいつも
悩んでいた。みんなであなたの幸せを願っていたんだよ。

そして最近思うのは、あなたはお父さんが大好きで
この田舎町にやってきて幸せだったのだということ。

頼りにならない娘ではありますが、あなたのことを父の代わりに
少しでも支えられたらと思います。

たっちゃんは一人ぼっちじゃないよ。

あなたは、きっとこれから、もっと子供に近くなるのだろうけれど
それは、それで幸せなことかもしれないと思う私なのです。
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(10代の母。はち切れそうな真ん丸顔。モダンガールだったんだよね)

◆ 追記 ◆
母は15歳で終戦を迎え、当時国鉄で女車掌をさせられていたそうです。
学徒動員と、戦争で男性がいなかったから、女性車掌。

その後、義姉の住む東京へ就職しました。そこでは時計宝飾店で
しばらく働き(ロンジンやオメガの時計などよく覚えています)
義姉の始めた定食屋さんに住み込みで働いたそうです。
最初、和歌山を離れた時は寂しくて、隠れて泣いてばかりいたそうです。

そんな母の定食屋さんは、撮影所の近くにあったこともあり
俳優さんの出入りもあったそうです。
今もテレビで見るご老人の俳優さんにも”たっちゃん”って呼ばれて
いたのですって。

そこに中央大学法学部に通っている父が足しげく通いだしたそうです。
母はインテリ?に弱かったようで、二人がその後どのようなやり取りで
結婚を決めたのかは教えてくれませんが
きっと強い、そして純粋な思いが母にはあったのだと思います。
父は故郷に遊びの女性がいたのは、のちに知ることになったらしい。
昔の男性によくある話ですが、、ねぇ。